筋肉量は年齢とともに減少していくものですが、特に50代になると筋肉量の落ちるスピードは加速します。それゆえ、50代になり「身体がたるんでいく」「すぐ疲れる」など、 身体の衰えに気づき始め、体力の悩みを抱えている女性も多いのではないでしょうか。
ですが、加齢によって減ってしまった筋肉を筋トレで取り戻しましょう。今さら始めて効果があるのか不安に感じるかもしれません。しかし、50代からでも筋トレに及ぼす影響は大きいのです。
そこで今回は筋肉をつけることで得られるメリットや初心者向けのトレーニング方法についてご紹介します。
筋トレの必要性が高い50代
老若男女問わず、健康維持やボディーラインを保つためには筋トレが効果的です。特に50代女性においては、筋トレの必要性が高いといえます。
老年医学会「日本人筋肉量の加齢による特徴」によると女性は50代かを境に筋肉量が大きく低下するためです。
もう一つの理由は閉経を迎えるため。閉経前後になると女性ホルモンのエストロゲンがほとんど分泌されなくなります。それまで女性はエストロゲンの分泌によって自律神経や免疫のバランスを保っていました。
しかし、エストロゲンの分泌が少なくなると体内のバランスが大きく崩れ、さまざまな症状が現れます。
その一つが筋肉量の低下です。閉経を迎える平均年齢は50.5歳。閉経を迎える50代は筋肉のターニングポイントといえるでしょう。
筋トレするメリット
筋肉が衰えてしまうのは仕方ないと思っていませんか。筋トレによって筋力をアップすることで以下の様なメリットがあります。
基礎代謝の向上
年齢を重ねるにつれて、少ししか食べていないのに太りやすくなったと感じませんか?それは基礎代謝量が年齢とともに低下しているためです。
基礎代謝は筋肉量が影響するため、筋肉量が少ないと基礎代謝量も低下してしまいます。そのため、筋トレによって筋肉量をアップすることで基礎代謝の量を高め、痩せやすい体を作ることができます。
美しい姿勢の維持・改善
お年寄りと聞いてどのような姿勢をイメージしますか?腰や背中が曲がっているイメージでしょう。反対にしゃんとした姿勢だと80代、90代でも実年齢よりも若く感じるのでは?このような若さの秘訣は姿勢の良さにあるのです。
人は地球の重力に対して無意識に姿勢を保持する筋肉を使っています。それが抗重力筋です。抗重力筋は日常生活で働いている部位ですが、この筋肉が衰えていくと重力に対して、正しい姿勢を保つのが難しくなります。
下半身の抗重力筋が弱まると、早い段階で背中が曲がり老けて見えてしまうので、日ごろから鍛えておくことで年齢を重ねても美しい姿勢をキープできるのです。
抗重力筋を大別すると5か所が挙げられます。背中の脊柱起立筋、広背筋、腹筋の腹直筋、腸腰筋、お尻の大殿筋、太ももの大腿四頭筋、ふくらはぎの下腿三頭筋です。
この背中・背筋・お尻・太もも・ふくらはぎの抗重力筋が働きながら重力に対してバランスをとっています。
免疫力・体力アップによる病気の予防
エストロゲンには血管の状態を保ち、内臓脂肪を分解しやすくなるといった働きがあるため、生活習慣病のリスクが高まるわけです。
筋力トレーニングを生活に取り入れることは、心肺機能を高め血管を健やかに保つことができ、筋肉をつけることで脂肪燃焼しやすい体づくりに役立てることができます。
まさに筋トレは病気のリスクを回避するために必要不可欠といえるでしょう。
精神的に安定する
筋トレには精神を安定させる効果もあります。筋トレを行うことでセロトニンという幸せホルモンが分泌されるからです。
緊張を緩めリラックス効果があるセロトニンを出すことはストレス解消につながります。筋トレを行うことで、イライラや不安感、不眠といった症状の緩和や更年期による症状の予防にも期待できます。
50代女性は下半身を鍛えるのがポイント
筋肉量が最も低下するのが下半身の筋肉だとわかっています。階段の昇り降りで疲れにくい体を作るためにも、下半身のトレーニングが重要になるでしょう。
スクワット
下半身を効率よく鍛えられます。スクワットによって立ち上がる、走るなどの日常動作が疲れにくくなります。
やり方は、
足を肩幅に広げ、つま先を少し外側に向ける
胸を張り背筋を伸ばす
お尻を後ろに突き出すイメージで、太ももと地面が平行になるまで膝を曲げる
胸から上がるイメージで立ち上がる
です。基礎代謝が上がり、お尻を鍛えることでヒップアップ効果が期待できます。
ただし、スクワットは正しい姿勢で行わないと膝に痛みが出てしまうため、姿勢を意識しながら行うことがポイントです。慣れるまでは鏡でチェックしながら正しい姿勢をマスターしましょう。
プランク
プランクは初心者でも取り入れやすく、お腹周り全体を鍛えられるトレーニング。姿勢改善の効果もあり、加齢とともに猫背になりがちな女性におすすめです。
やり方は、
両ひざを床につけ両足を肩幅に開き、体を両肘とつま先で支える
腹筋とお尻に力を入れて、身体と床が平行になるよう保つ
息を止めずに30秒姿勢をキープする
です。プランクは姿勢をキープするのに少々きつい筋トレですが、お腹周りの引き締めや姿勢改善に効果があります。
ヒップリフト
仰向けに寝ながら行うトレーニングで、テレビを見ながらポッコリお腹の改善に効果的です。
やり方は、
仰向けになり両ひざを腰幅に広げて曲げる
お尻をゆっくり持ち上げる
膝と鎖骨がまっすぐになるよう意識して、すねは床と垂直にする
ゆっくりお尻を下す
です。ヒップアップや姿勢矯正、ポッコリお腹の改善にも効果が期待できます。
やりがちな失敗例
正しく筋トレを行っていれば、年齢に関係なく筋肉量は徐々に増えていきます。しかし、筋トレをしているのにまったく筋肉がつかないという場合、やり方が間違っているかもしれません。
タンパク質が足りていない
筋トレは筋肉を傷つけて再生することで筋肉を増やします。そのため、筋肉の再生時にタンパク質が足りていないと筋肉は太く大きくなりません。
タンパク質は肉や魚、大豆に多く含まれています。意識して摂りたいところです。
しかし、年齢とともにタンパク質の合成反応が遅くなり、消化酵素の活性も急激に低下してしまうため、若い時よりもタンパク質を多く摂取しなければ筋肉を増やすことが難しくなります。
50代女性の1日の摂取目標量は61.8~95gなので、一食当たり20g以上必要です。筋肉を増やしたいなら一食30gを摂らなければなりません。食事で摂るのが難しい場合、プロテインを利用するのもいいでしょう。
炭水化物は抜かない
炭水化物抜きダイエットが一般化していますが、炭水化物を極端に抜いてしまうと筋肉を動かすためのエネルギー源が不足してしまいます。
せっかく筋トレを頑張っても、エネルギーとなる炭水化物がなければ筋トレの効果が得られにくくなってしまうでしょう。
そのため、炭水化物を極端に抜いた食事制限はおすすめできません。食事で気をつけたいポイントは、バランスの良い食事をしっかり摂りつつ、タンパク質をプラスすることです。
炭水化物の代わりにタンパク質を多く摂取するのではなく、あくまでもバランスを意識した食事が身体づくりの基本となります。
休息をとっていない
筋肉は損傷と回復を繰り返して成長していきます。傷ついた筋肉を回復する時に元より大きく回復することで、強く大きくなっていくのです。だから筋肉を育てるには、トレーニングでしっかり負荷をかけてダメージを与え、その後しっかり休んで筋肉を回復させることが大切です。
効率よく筋肉をつけるには、毎日筋トレをするよりも、休息日を使って筋肉を休ませましょう。筋肉が大きくなろうとする反応のことを超回復といい、筋トレ後1~2日続きます。
超回復にかかる時間を考えると、筋トレは週に3回くらいがおすすめです。1日おきに休息日ができるので、しっかりと筋肉の回復を待ってからトレーニングができます。
短期間での効果を期待しない
50台になってから短期間のうちに筋肉をつけようとすると、身体に負担がかかりケガや体調不良のリスクが高まります。確実に筋肉を増やすため、1カ月などの短期間ではなく最低3カ月以上じっくり継続して行うことを念頭に置きましょう。
特に運動初心者はすぐに結果を求めるのではなく、まずは身体を動かす事に慣れることが大切です。厳しく取り組みすぎず、無理なく行える範囲で継続することで長期的な筋肉量の維持とアップにつながっていきます。
食後すぐの筋トレは避ける
食後すぐの筋トレは避けましょう。個人差はありますが、消化が終わるのは食後の2~3時間といわれています。消化しないまま筋トレを行うと筋肉を作るエネルギーも消化に使われるため、効率が悪く筋肉がつきません。
筋トレをする2~3時間前に食事を済ませましょう。2~3時間経過してもお腹が重く感じたら、無理せず消化を待ったほうがいいでしょう。
筋トレに対する誤解
筋トレに対してムキムキになってしまうという誤解があります。しかし、筋トレのターゲットにする筋肉を適切にトレーニングすれば、ムキムキになることはありません。
女性は男性に比べると筋肉を大きくするホルモンテストステロンが1割以下なので筋肉を増やすのが大変だからです。
しかし、女性らしいボディーラインを作る筋トレは、無理のないトレーニングを続けることが大切になります。モデルさんも筋トレを行っています。
正しいやり方で筋トレすれば、スリムで美しいボディーラインに近づけることができるのです。
身体的にも精神的にも大きく変化する50代女性。このタイミングで筋トレを始めれば、将来の過ごし方に大きな違いがでてきます。
年を重ねても元気でいられるように、ぜひ筋トレをスタートしましょう。筋トレは裏切りません。